「迷惑メールが送られてきても無視する力をつけよう」「SNS(コミュニティーサイト)やプロフ(自己紹介)サイトで氏名や学校名を絶対に書いちゃだめ。悪いヤツが家までやって来るぞ!」
川崎市多摩区の市立枡形(ますがた)中学校(前田高幸校長、生徒404人)で今月19日、ネット犯罪から身を守る講習会が開かれた。講師のシステムエンジニア、田島和彦さん(44)は、トラブルに遭遇した子どもたちの「駆け込み寺」として、ネット社会や教育界で知られた存在だ。
「IPアドレス(ネット上の住所)を元に、発信者の居住地域や使用した携帯電話を特定するのは簡単なんだ。いくらでもツールがある」。あえて専門用語を使い、犯罪に巻き込まれた実例を挙げながら、ネット社会の「闇」をリアルに紹介した。個人情報を書き込んだばかりに、「ネンチャク」(粘着)と呼ばれる、つきまとい行為の被害を受ける子どもが多い−−。生徒たちは一様に、顔をこわばらせていた。
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昨年4月に「有害サイト規制法」が施行され、各携帯電話会社は未成年のユーザーを守る努力を求められることになった。未成年が使う携帯端末の販売時には原則、「フィルタリング」と呼ばれる閲覧制限機能を提供している。しかし、まだ普及は十分ではない。
日本PTA全国協議会が昨年11〜12月に行ったアンケートによると、携帯電話やPHSを使う子ども(有効回答・小5と中2で計1208人)のうち、フィルタリング機能が「付いている」と答えたのは小5で33・0%、中2で35・9%にとどまった。
また、「ウェブは使わない」(ネットに入らない)など利用制限のルールを家庭内で設けているか尋ねたところ、「ある」と答えたのは小5で51・8%、中2で34・4%だった。
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警察庁の「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」は06年12月の最終報告で、携帯電話の使用について、家庭で定めるべき七つのルール=別表=をまとめた。深夜の利用をやめさせるなど、親が積極的に働きかけることを求めている。
研究会のメンバー、藤川大祐・千葉大教授(教育方法学)は「子どもに携帯電話をせがまれてもすぐに買い与えず、まずは親子でよく話し合ってほしい。何のために使うのか、通話やメールをしたい相手は誰と誰で、全部で何人ぐらいか、料金の支払いはどうするか。注意しないと、トラブルに巻き込まれることを伝えてください」と呼びかける。
藤川教授は今年3月、各種コミュニティーサイトへの投稿7000件を分析した。詳しい個人情報を書かせたり、顔写真を掲載させたり、男女の出会いを誘導するような書き込みもあったという。
フィルタリングするには、有害サイトを遮断する「ブラックリスト」方式より、子どもに有益で無害のサイトだけにアクセスできる「ホワイトリスト」方式を藤川教授は薦める。「ネット社会は危険がつきまとうことを、子どもに理解させなければいけません。約束を破ったら利用停止にしたり、没収するぐらいしないと、愛するわが子を守ることはできない」と話した。
◇親が利用制限できる端末も
ベネッセは今年2月、添削講座の会員を対象に、携帯電話「ベネッセモバイル・フレオ」(ソフトバンク系)を発売した。親が独自に、曜日ごとの通話時間やメール送受信の許可・不許可を決めることができ、フィルタリングの強弱も設定できる。フィルタリング機能の高さが「国内随一」と評判だという。
端末代金は不要、基本使用料は月額5950円と割安感がある。同社の担当者は「従来のフィルタリングでは不十分だと考えた。会員の子どもたちを少しでも、ネットのトラブルから守りたい」と話している。
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■携帯電話のルール例(かっこ内はその理由)
<1>自宅内では居間で使う(親の監視の下に使わせる)
<2>食事中や懇談中、深夜には使用しない(けじめを覚えさせる)
<3>一定の金額以上は使わない(経済教育で高額請求を防ぐ)
<4>学校での使用については学校のルールに従う(どこにいてもルールを守る)
<5>他人を傷つけるような使い方をしない(ひぼう中傷させない)
<6>送信者不明のメールや知らない者からのメールが来た場合は速やかに親に報告する(トラブルから守る)
<7>ルール違反や携帯電話の使用によって生活に支障が生じている場合には携帯電話の利用を停止する(違反にはペナルティーが必要)
※「バーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会」の最終報告から
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